野蚕糸は家蚕糸と比べてグリシンよりアラニンが多く、結晶部分の分子構造もアラニンが連続して連なっている部分が多い。これは野蚕糸の収縮性、強伸度性、低染色性などの特徴がこれらの分子配列に起因しているものと考えられる。
また、野蚕はだいたい家蚕よりもデニールが太く、繊維断面が扁平であることが多い。
野蚕の中には、最初から多孔性の中空構造を有しているものも多く(タサール蚕など)これらの性質からハイバルキーのニット織物に向いている。
では、家蚕や野蚕の蚕種はどんなものがあるのでしょうか。
科目
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蚕種
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原産地(棲息生産地)
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代表的飼料
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色と特徴
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カ
イ
コ
ガ
科
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カサン |
中国 (世界各国) |
桑 |
通常の生糸の原料 |
クワコ |
中国 (世界各国) |
桑 |
カサンの一原種 |
カンボウジュ |
ベトナム(ベトナムラオス) |
-
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カサンの一原種、金色の繭糸 |
ウスバクワコ |
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-
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インドクワコ |
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-
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-
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ヤ
マ
マ
ユ
ガ
科
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テンサン(天蚕) |
日本(北東アジア) |
くぬぎ、樫 |
薄緑色 |
サクサン(柞蚕) |
中国(中国北東部) |
くぬぎ、樫 |
黄褐色、生産規模最大の野蚕 |
タサール蚕 |
インド |
沙羅双樹 |
黄褐色、インド柞蚕ともいう |
ムガ蚕 |
インド |
ホオノキ、木蓮 |
黄褐色、最高級サリーなどに |
エリ蚕(ヒマ蚕) |
インド(中越国境近辺) |
ヒマ、シンジュ |
生成 |
レッドエリ蚕 |
インド(インド) |
ヒマ、シンジュ |
赤茶色 |
クス蚕(栗繭) |
日本(日本) |
胡桃、栗、楠 |
薄茶色 害虫、昔のテグス原料 |
ヨナクニ蚕 |
(東南アジア一帯) |
-
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茶褐色 |
セクロピア蚕 |
北米 |
柏、ポプラ |
-
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クリキュラ |
インドネシア(インドネシア) |
-
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金色 |
シンジュ蚕 |
中国 |
シンジュ、ニガキ |
-
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他にオオミズアオ、ウスタビガ、ロスチャイルドヤママユガ(南米)など |
カ
レ
ハ
ガ
科
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ボロセラ |
マダガスカル |
-
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マダガスカルの弔布の原料 |
マツカレハ |
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-
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-
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ゴノメタ |
アフリカ |
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部族の首飾り用 |
パキパサ |
ヨーロッパ |
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-
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ギ
ョ
ウ
レ
ツ
ケ
ム
シ
科
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アナフェ |
(中部アフリカ) |
ブリデリア |
茶色 世界最大級の三層繭 |
上記以外にも地球上には多種多様な蚕種が存在するものの、現地ではそれらを天然資源として活用する術を持たなかったり、樹木の葉を食い荒らす害虫扱いであったりします。
これらが新しい絹資源としてこれから活用されていくものと期待されています。
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